学生の頃に、とある大学の商学部に在籍していました。ビジネスのこと、経済のこと、法律のこと等がとても「面白い」と感じ、楽しく学んでいました。社会人になってからも、重めの経済書や、海外の論文なんかを楽しみながら読んでいます(変わっていますね (^^; 、奥さんからもそう言われます)

そんな私の一つの夢は、今は幼い娘たちが社会人になるような頃に、私が大好きな商学/経済学の魅力をちょっとだけ感じてもらうことです。まあ、たぶん、その夢は叶わないとも感じていますが(笑) お友達とのおしゃべり、彼氏君とのデート、楽しい映画や好きな音楽、そんな中に「経済」が入るイメージが持てないですね。

でも、そんな夢に向けて、今の世の中で起こっている商学や経済学に関係することを、未来の娘たちに語るような感じで説明していこうと思います。難しい言葉はなるべく使わず、そして、「へぇ~、ちょっと面白いかも」なんて思ってくれるような内容になるように、お父さん頑張っていきますね。

 

前置きが長くなりました。では、今回の話を始めますね。
FOMCの意外な楽しさ 」についてです。

目次

 

・はじめに

・2022年9月FOMCの概要

・コラム〜経済予測情報が面白い〜

・コラム〜世界経済、これからどうなる?〜

・おわりに

はじめに

2022/9/21にアメリカの金融政策決定会合(FOMC:Federal Open Market Committee連邦公開市場委員会)が開催されました。その後、各国の株価が乱高下し、日本では久しぶりに為替介入がなされましたね。

 

 

今回は一連の流れのきっかけとなった9月FOMCについて、楽しいポイントなども含めて紐解きながら、これからの経済について少し眺めていこうと思います。

 

 

ちょっとでも楽しいと感じてくださる箇所がありますと嬉しいです!

以降の画像出典元はFRB公式サイトです

https://www.federalreserve.gov

2022年9月FOMCの概要

 

今回のFOMCは「事前に想定されていた通りの政策判断」となりました。

 

と言うのも、パウエル議長ご自身が「Since JACKSON HOLE, my main message has remained the same.ジャクソンホール会議以来、私のメッセージは全く変わっていませんよ」と説明してから、記者会見の質疑応答が始まっていたんです。一部報道はセンセーショナルに扱っていましたが、今回は「驚き」ではありませんね。では、少し経緯含めてご紹介します。

 

・事前の想定とは?

先日ご紹介した「ジャクソンホール会議でのパウエル議長公演」での方向性です。インフレ対応が最優先、経済そして人々が痛みを背負うことがあっても金融の安定を図る対応をしっかりと取る。ここから、今回も通常の3倍の速度となる0.75%の利上げと金融引き締めが行われると想定されてきました。

 

 

・今回の結果

事前の想定通り0.75%の利上げとなりました。少し細かく解説すると、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.00~3.25%としました。3%を超えることって、2008年1月以来で、約14年半ぶりのことなんです(!)

 

 

最近はリーマンショックやコロナがあったので、金利を下げて経済を下支えしていましたが、一気に「普通」の金利に戻った感じです。このスピードは普通ではありませんが…

 

 

・驚きではないけど、世界中がたじろいだ一言

 

ワシントンポスト記者からの質疑の中での一言に「ソフトランディングは非常に困難(チャレンジング)だ一連の引き締めが景気後退につながるのか、それがどの程度になるのかは誰にもわからない。」というものがありました。

 

 

世界中の金融関係者の想定通りではありましたが、改めて明言されてしまうと、なかなかのインパクトがあります。

 

 

ただ、インフレを抑え込むために、金利引き上げと金融引き締めによって需要を抑え、雇用逼迫による賃金上昇の速度を抑えるために失業率も若干の上昇を許容するようなコメントも出ているので、景気後退を避けることは難しそうですよね…

 

 

今回の内容は想定の範囲内ではありましたが、少し「面白い」データがありました。それはSummary of Economic Projectionsという詳細情報です⇨

コラム 〜経済予測情報が面白い〜

今回のFOMCでは「Summary of Economic Projections」という、FOMC参加者の皆様個々人の経済予測や政策金利目標等の情報が公開されたのですが、こちらが少し興味深かったのでご紹介させてください。

 

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20220921.pdf

 

 

・今後の経済見通しは低調

上記のような表で各種経済見通しが紹介されるのですが、やはり低調な見通しです。実質国内総生産(GDP)の増加率の中央値は22年で0.2%、23年で1.2%となっています。長期的な成長見通しは1.8%なので、こちらを大きく下回る成長率なんです。

 

 

会見でも、以下のような感触が示されていました。

 

・米経済は2021年の歴史的な高成長率から鈍化している。

・消費と生産の指標は緩やかな伸び。

・個人消費は実質可処分所得の縮小と、金融引き締めを受けて21年よりは減速

住宅市場はローン金利上昇により著しく弱まった

金利上昇と生産鈍化が企業の設備投資を圧迫し、海外経済の成長鈍化が輸出を停滞させているようだ

 

厳しいですね…。次は個人的に「好きな」タイプの詳細情報です⇨

 

・実は少し意見が割れている

 

最近は0.75%という利上げが当たり前となってしまいましたが、これは通常の3倍のペースなので、インフレに対して有効ですが、経済に対してもかなりの「切れ味」となります。この速度の利上げがいつまで続くのかが今の焦点となっています。

 

 

ヒントとなるのは、今回示されたFOMC参加者の政策金利見通しです。こんな感じでドットで示されるので、ドットチャートと呼ばれています。

22年末時点での政策金利見通しは中央値が4.4%でした。6月の前回見通しは3.4%だったので、情勢はかなり変わりましたね。そして、年内に予定されるFOMCは残り2回なので、今回の3.00~3.25%という範囲から1.25%の追加利上げが必要となる計算です。そのため、11月の次回会合でも0.75%の利上げとなると想定することが妥当です。

 

 

「こんなに利上げして大丈夫かな」って思いますよね。実はドットチャートを見ると、しっかりと意見が割れていることが分かってしまいます。青矢印の部分です。

参加者19人のうち8人は年内に計1%の追加利上げの予想ですので、今後の2回は0.5%ずつに、少し利上げペースを緩めることを考えているようです。(まぁ、それでも通常は0.25%の利上げなので、かなりの速度ではありますが…)

 

 

この超細かな箇所ですが、FOMC内でも多くの議論がなされていることがわかり、個人的に好きなんです。⇦変わっていますね(笑)

 

 

では、最後に結構気になる今後の経済について眺めてみます。

コラム 〜世界経済、これからどうなる?〜

パウエル議長が会見でも以下のようにコメントしていた通り、金融政策の影響は時間差で実態経済に影響を与えるものなんです。

 

 

 「我々の政策は金融情勢に直ちに影響を与える。金融市場は我々が実際に決定を発表する前から反応し、そこから数カ月たって経済活動に影響を与え始める。金融情勢の変化がインフレに完全に影響を与えるにはしばらく時間がかかるので、我々は注視している。ある時点で利上げペースを落とし、経済への影響を評価することが適切だ。」

 

 

今ドンドン利上げしている影響は、少し時間差で経済をドンドン冷え込ませることが見えていますね。今の焦点は「冷えることはわかっているけど、冷やしすぎないようにできるか?」という点で、「でも、ソフトランディングは難しそう」とFRB自身が言っているという状況です。シンプルに、まずい状況なんです。(笑)

 

 

そして、金融の次に影響が見えてくるのは「物流」とされています。アナリストの皆さんは物流の大手企業の業績に注目するのですが、最近こんなニュースが飛び込んできましたね。

物流大手 FedExの苦境

9/22に発表した2022/6-8月決算では純利益が前年同期比で21%も減少しました。CEOはアジアと米国の取扱量の低下はマクロ経済が悪化した影響が大きいと説明しています。例えば、米国の小包取扱量は11%減、そして海外向けは7%減でした。他の多くの指標も対前年同期でマイナスとなっていて、物量が確実に落ち込み始めていることが見えてきました。今後の実態経済を不安視する人が増えた決算でした。

画像出典元:FedEx投資家向け情報サイト
https://s21.q4cdn.com/665674268/files/doc_financials/2023/q1/FedEx-Q1-FY23-Earnings-Release[].pdf

 

 

(ちょっと脱線:

今回の純利益の大幅な減少は「フェデックス自身の問題をマクロ経済の問題にすり替えている」可能性もあるため、少し注意してみています。何のことかというと、フェデックスは2016年に欧州で経営不振に陥っていたオランダのライバルTNTエクスプレスを44億ユーロで買収していましたが、その買収があまりうまく言っていませんでした。ライバルのUPSはフェデックスよりも株価が安定しています。

 

 

「今の苦境はマクロ経済のせいだ!」という企業は、少し注意して見る必要があるんです。

 

話を戻しまして、本題である景気動向を見るという視点では、物量自体も減っているので「やはり今後は低調な経済に陥ってしまうのかな」というヒントとなる決算でした。)

 

おわりに

今回も長々と失礼しました。少しでも「意外に楽しいね」なんて感じて下さる箇所がありましたら嬉しいです♪

 

 

お読み下さり、ありがとうございました!

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