学生の頃に、とある大学の商学部に在籍していました。ビジネスのこと、経済のこと、法律のこと等がとても「面白い」と感じ、楽しく学んでいました。社会人になってからも、重めの経済書や、海外の論文なんかを楽しみながら読んでいます(変わっていますね (^^; 、奥さんからもそう言われます)

そんな私の一つの夢は、今は幼い娘たちが社会人になるような頃に、私が大好きな商学/経済学の魅力をちょっとだけ感じてもらうことです。まあ、たぶん、その夢は叶わないとも感じていますが(笑) お友達とのおしゃべり、彼氏君とのデート、楽しい映画や好きな音楽、そんな中に「経済」が入るイメージが持てないですね。

でも、そんな夢に向けて、今の世の中で起こっている商学や経済学に関係することを、未来の娘たちに語るような感じで説明していこうと思います。難しい言葉はなるべく使わず、そして、「へぇ~、ちょっと面白いかも」なんて思ってくれるような内容になるように、お父さん頑張っていきますね。

 

前置きが長くなりました。では、今回の話を始めますね。
ジャクソンホール会議って何? 」についてです。

目次

 

・はじめに

・ジャクソンホール会議って何?

・パウエル 米FRB議長が語ったことの全て (個人的に楽しいと感じた箇所のコメント付き)

・おわりに

はじめに

最近、ニュースで大きく報道されていることがあります。

今回は、「ジャクソンホール会議とは?」「なぜ皆さんが注目しているの?」といったことについて、雑談を交えながらのんびりとご紹介していきますね♪

ジャクソンホール会議って何?

 

米国ワイオミング州にジャクソンホールという高原リゾートがあります。ロッキー山脈の近くです✨

 

 

その地でカンザスシティ連邦準備銀行が毎年8月に開催する経済政策シンポジウムのことを「ジャクソンホール会議」といいます。

 

 

世界各国から中央銀行総裁や経済学者などが参加し、世界経済や金融政策について議論を交わします。このような皆様がオープンに真剣な議論を交わす場は、実はけっこう珍しいので、大切な場となっています。

 

 

(ちなみに、通訳も一切無しだそうです。英語を話せることは、やっぱり大事ですね 笑 )

 

 

少し学術よりの会議ですので、普段は経済や金融に関係する人が注目するくらいですが、最近はインフレや金利が大問題になっているので、たくさんの方が注目する場となっています。そして、一番注目されているのは、アメリカのFRB議長パウエル氏が、これからの経済や対策について、どのようなコメントを残すかでした。

 

 

ニュースでは一部分のコメントのみ紹介されるのですが、実はYouTubeで全ての講演内容を見ることができるんです。今回は、その内容全文を眺めながら、どこが楽しいポイントなのかコメント挟みつつ眺めていきますね。

パウエル議長が語ったことの全て(と、個人的に楽しいと感じた点)

Jackson Hole Symposium Opening Remarks 2022

https://youtu.be/vhMRynjm3CI

この講演内容が全て公開されています。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20220826a.htm

 

 

では、全文の和訳を基に、一部コメント(薄朱字)を入れますね。

 

 

=====

2022/8/26
金融政策と価格の安定性
Monetary Policy and Price Stability
chair Jerome H. Powell

2022年8月26日

金融政策と価格の安定性

議長ジェローム・Hパウエル

ワイオミング州ジャクソンホールのカンザスシティ連邦準備銀行が主催する経済政策シンポジウム「経済と政策に関する制約の再評価」で

 

 

今日はここで話す機会をいただき、ありがとうございます。

 

 

過去のジャクソンホール会議では、絶え間なく変化する経済構造や、高い不確実性の下で金融政策を実施するという課題など、幅広いトピックについて議論しました。今日、私の発言は短くなり、焦点は狭くなり、メッセージはより直接的になります。

(いきなりコメントを入れますが、昨年はパウエルさんにとって少しほろ苦い場でした。昨年「インフレは一過性のもの、長くは続かない可能性が高い」という趣旨の考えを示し、その理由を5つ紹介していました。その結果は?というと、ご存知の通り真逆ですね。ちょっと口悪い・皮肉屋の金融関係者は「パウエルさんのジャクソン5」と、マイケルジャクソンさんが参加していたグループ名を使って批判的なジョークにしていました。

 

 

なので、今回のパウエルさんは「短く、狭く、直接的に」見解を述べていました。過去の経緯を知っていると、ちょっと楽しいと感じる場面でした♪)

今の連邦公開市場委員会(FOMC)の包括的な焦点は、インフレを2%の目標に戻すことです。価格の安定性はFOMCの責任であり、私たちの経済の基盤として機能します。価格の安定性がなければ、経済は誰にとっても機能しません。特に、価格の安定性がなければ、すべての人に利益をもたらす強力な労働市場状況の持続的な期間を達成することはできません。高インフレの負担は、最も耐えられない人に最も重くのかかります。

 

 

価格の安定性を回復するには時間がかかり、需要と供給のバランスをより良いものにするためにツールを強制的に使用する必要があります。インフレを減らすには、傾向を下回る成長の持続的な期間が必要になる可能性が高い。さらに、労働市場の状況がソフトになる可能性が非常に高いです。より高い金利、遅い成長、よりソフトな労働市場の状況はインフレを低下させるが、家庭や企業にも痛みをもたらすだろう。これらはインフレを減らすための不幸なコストです。しかし、価格の安定性を回復しないと、はるかに大きな痛みを意味します。

(この箇所を聞いて、「あ、本気でインフレ退治を行う予定だし、そのためには多少家庭や経済が痛みを負っても良いと考えているんだ…」と世界の関係者が思いました。経済が悪化し、株価も下落すると思い、多くの方が安い価格で株式を売ったため、講演直後に株価が急落しました。

 

 

ただ、元々想定されていた内容でもあるので、驚きは少ない面もありました。これからも、ちょっとしたニュースで株価が乱高下するような時期が続きそうです…)

米国経済は、パンデミック不況後の経済の再開を反映した2021年の歴史的に高い成長率から明らかに減速している。最新の経済データは混在していますが、私の見解では、私たちの経済は強い根本的な勢いを示し続けています。労働市場は特に強いですが、明らかにバランスが崩れており、労働者の需要は利用可能な労働者の供給を大幅に上回っています。インフレは2%をはるかに上回っており、高いインフレは経済全体に広がり続けています。7月のインフレ測定値の減少は歓迎されていますが、1か月の改善は、インフレが下がっていることを確信する前に委員会が見る必要があるものよりもはるかに及ばない。

 

 

私たちは、インフレを2%に戻すために十分に制限されるレベルに意図的にポリシースタンスを動かしています。7月の最新の会議で、FOMCは連邦資金率の目標範囲を2.25から2.5%に引き上げました。これは、連邦資金率が長期的に決済されると予測される経済予測範囲にあります。現在の状況では、インフレ率が2%をはるかに上回り、労働市場が非常に厳しいため、長期中立の見積もりは停止または一時停止する場所ではありません。

 

 

7月の目標範囲の増加は、多くの会議で2回目の75ベーシスポイントの増加であり、次の会議では別の異常に大きな増加が適切かもしれないと言いました。私たちは今、期間のほぼ途中です。9月の会議での決定は、データと見通しに依存します。ある時点で、金融政策のスタンスがさらに厳しくなるにつれて、増加のペースを遅らせることが適切になる可能性があります。

(FRBは「金融政策はデータ次第」と言い続けているので、ここは今までのスタンスを維持しています。ただ、この「データ次第」という箇所を多くの方が自身の都合のいいように解釈してしまったのが、昨今の株高につながっていました。「データ次第と言っている。だから、少しインフレが治まってくると利上げをマイルドにするんじゃないの?」「経済データが悪くなってきたら、影響を緩和させるためにFRBが金融緩和を続けてくれるんじゃないかな?」といった考えです。

 

でも、「データを見ながら、ちゃんとインフレを抑えるよ」という、文字通りの意味であることを改めて発信し、変な捉え方を否定しているんです。)

価格の安定性を回復するには、しばらくの間、制限的な政策姿勢を維持する必要があるでしょう。歴史は、政策の早期緩和に強く反対している。6月のSEPからの委員会参加者の最新の個々の予測では、連邦資金率の中央値は2023年末まで4%をわずかに下回っていることが示されました。参加者は9月の会議で予測を更新します。私たちの金融政策審議と決定は、1970年代と1980年代の高低インフレと不安定なインフレ、そして過去四半世紀の低安定インフレの両方からインフレダイナミクスについて学んだことに基づいています。

 

 

特に、私たちは3つの重要な教訓に基づいています。

最初の教訓は、中央銀行は低く安定したインフレを提供する責任を負うべきだということです。中央銀行家などがかつてこれら2つの面で説得力が必要だった今、奇妙に思えるかもしれませんが、ベン・バーナンキ元会長が示したように、両方の提案は大インフレ期間中に広く疑問視されました。

 

 

1 今日、私たちはこれらの質問を解決したと考えています。価格の安定性を提供する責任は無条件です。現在の高いインフレは世界的な現象であり、世界中の多くの経済がここアメリカで見られるよりも高いまたは高いインフレに直面しているのは事実です。私の考えでは、米国の現在の高インフレは強い需要と供給の制約の産物であり、FRBのツールは主に総需要で機能することも事実です。これはいずれも、価格の安定性を達成するという割り当てられたタスクを実行する連邦準備制度理事会の責任を低下させるものではありません。供給によりよく一致させるために、需要を緩和する作業が明らかにあります。私たちはその仕事をすることにコミットしています。

(「需要を緩和する」って、ちょっと分かりにくいかもしれません。ざっくりというと「人々がモノやサービスを、あまり欲しがらない状態とする」ということです。金利を上げると、あまり大きな借金ができなくなるので、家や車を買う人は少なくなりますね。実際に、アメリカでは少しずつ家を買うペースが落ちてきたとされています。ただ、まだまだお金持ちの方は多くて、値段は下がっていないので問題なのですが…話戻しまして、金融緩和ではなく、金融引き締めとなると、こちらもお金を調達しにくくなり、物やサービスを買う人が減っていきます。

 

そして、物やサービスを買う人が減ってしまうと、経済が停滞し不況になってしまう可能性があるので、多くの人が心配しているんです。そんな皆様に、FRB議長が「需要を緩和する作業が明らかにある。私たちはその仕事をすることにコミットしています There is clearly a job to do in moderation demande to better align with supply. We are committed to doing that job」とコメントしたのですから、一部皆様が「ひえー😱」ってなっていたんです笑)

2番目の教訓は、将来のインフレに対する国民の期待が、時間の経過とともにインフレの道を設定する上で重要な役割を果たす可能性があるということです。今日、多くの措置により、長期的なインフレ期待は十分に固定されているように見えます。これは、世帯、企業、予測者の調査、および市場ベースの措置にも広く当てはまります。しかし、それは自己満足の根拠ではなく、インフレはしばらくの間私たちの目標をはるかに上回っています。

国民が時間の経過とともにインフレが低く安定し続けることを期待しているなら、大きなショックがなければ、それはおそらくそうするでしょう。残念ながら、高ボラティリティインフレの期待にも同じことが言えます。

 

 

1970年代、インフレが上昇するにつれて、高いインフレの期待は家庭や企業の経済的意思決定に定着するようになった。インフレが上昇すればするほど、人々はそれが高いままであることを期待するようになり、その信念を賃金と価格設定の決定に組み込みました。ポール・ボルカー元議長が1979年に大インフレの最盛期に置いたように、「インフレはそれ自体の一部を供給するので、より安定した生産的な経済に戻る仕事の一部は、インフレ期待のグリップを破ることでなければならない」実際のインフレが将来の道筋に対する期待にどのように影響するかについての有用な洞察の1つは、「合理的な不注意」の概念に基づいています。

(ここの説明、ちょっと分かりにくくて眠くなりますよね笑。でも意外に興味深い箇所なんです。なぜなら、インフレ退治をした代表的な偉人といえば、ここでも言及されている「ポール・ボルカー元米FRB議長」なのですが、経済が多少落ち込んだとしても厳格にインフレ退治を進めた方として有名なんです。政策金利を大幅に引き上げ、景気後退を経験し失業率も大きく上がりましたが、インフレを落ち着かせることに成功しました。その方の言葉を引用したということは「経済が多少停滞したとしても、FRBの責任である価格の安定を実現する」という強い意志がありそう…、と大きな不安を感じた方が多かった箇所でした。)

インフレが持続的に高い場合、家庭や企業は細心の注意を払い、経済的決定にインフレを組み込む必要があります。インフレが低く安定しているとき、彼らは他の場所で注意を集中します。アラン・グリーンスパ元会長は次のように述べています。「すべての実用的な目的のために、価格安定性は、平均価格水準の予想される変化が十分に小さく、徐々になり、実質的にビジネスや家庭の財務上の決定に参入しないことを意味します。」もちろん、インフレは今、ほぼすべての人の注目を集めており、今日の特定のリスクを強調しています。現在の高インフレが続く時間が長ければ長いほど、より高いインフレの期待が定着する可能性が高くなります。

 

 

それは私を3番目のレッスンに連れて行きます。つまり、仕事が終わるまでそれを続けなければならないということです。歴史は、高いインフレが賃金と価格設定に定着するにつれて、インフレを下げるための雇用コストが遅れて増加する可能性が高いことを示しています。1980年代初頭のボルカーのデインフレの成功は、過去15年間でインフレを下げようとする複数の失敗した試みに続きました。高いインフレを食い止め、昨年の春まで標準であった低水準で安定したレベルにインフレを下げるプロセスを開始するには、最終的に非常に制限的な金融政策の長い期間が必要でした。私たちの目的は、今決意を持って行動することで、その結果を避けることです。

 

 

これらの教訓は、インフレを抑えるためにツールを使用する際に私たちを導いています。私たちは、需要が供給とよりよく一致し、インフレ期待を固定し続けるために、需要を緩和するための強力かつ迅速な措置を講じています。私たちは仕事が終わるまでそれを続けます。

(この言葉を持って講演を終えています。

 

多くの方や報道は悲観的だったのですが、実は今までのFRBのスタンスから大きく変わったわけではない講演でもありました。そして、迅速な措置によりインフレを克服することを示しているので、想定しやすい姿勢でもあります。

これからもFRBは各種データに沿って政策を決定していくことが再確認できた場でした。なので、今後も今まで通りのんびりとデータを分析しながら、時々雑談交えてそのデータをご紹介させてください。経済データって、見てみると意外に楽しくて、そしてちょっぴりためになったりするんです♪

おわりに

ちょっと長くなりすぎました、すみません!

 

 

冒頭でご紹介したような「楽しい」ものでは無かったと感じていますが、ちょっとでも「へぇ~」と感じて下さった箇所がありましたら嬉しいです♪

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